和歌と俳句

山口誓子

凍港

定家忌や高き貴き姫みこも

定家忌へまかる左手の皇居

定家忌や勤やすまず川田順

竜胆の花踏まれあり狩の場

あしたより鰯雲あり小鳥網

昇降機聖誕祭のとつくにびとと

扉のひまに厨房見ゆるクリスマス

映画会聖誕祭の童ばかり

わらべらに寝ねどき過ぎぬクリスマス

猫柳高嶺は雪をあらたにす

かげろひて港は夏をおもはしむ

あばら骨露はに釈迦の寝ねませり

薺かれて白妙の鞠梶の葉に

梶鞠や彌白妙に替の鞠

梶鞠や金の菖蒲を尽きし袖

崎の海は荒びたれども夏祭

浜木綿は甲羅法師のかざす花

玉虫の雌はとまれども雄はとぶも

けふ来たる海草中の青キヤムプ

美き雲にいかづちのゐるキヤムプかな

いかづちの夜空を離らぬキヤムプかな

高浪に眼をねむらざるキヤムプかな