志賀直哉あゆみし道の蝸牛 三鬼
あをぎりの脂を垂るや蝸牛 誓子
曇天の殻青白き蝸牛 誓子
やさしさは殻透くばかり蝸牛 誓子
蝸牛の角風吹きて曲りけり 朱鳥
蝸牛の角伸びてくる虚空かな 朱鳥
古庭のででむしの皆動きをり 虚子
吾子達の齢は朝や蝸牛 草田男
蝸牛どこにて傘につきしものか 彷徨子
蝸牛つきし葉の他真青に 節子
北庭に下りて得たりし蝸牛 多佳子
帰りゆく人のみ子等と蝸牛 多佳子
ででむしにをりをり松の雫かな 万太郎
妻の疲れ蝸牛はみな葉の裏に 欣一
ででむしや昨日作りし袖垣に 虚子
蝸牛の移り行く間の一仕事 虚子
蝸牛孫を抱きたる足で踏みぬ 耕衣
蝸牛も岐れ合ふ枝もわかわかし 波郷
でで虫やきのふの日和けふの雨 万太郎
でで虫のすがれる木戸も月となり 万太郎
法の池堕ちて溺るる蝸牛 草田男
蝸牛踏み潰す淡彩の人 耕衣
石に点し竹に点せし蝸牛 虚子
一生の重さ罪負ふ蝸牛 風生
ででむしや高音細音に日本の笛 不死男
ででむしやダムに長居の袋雲 不死男
葉の裏にひぐれの暗さかたつむり 楸邨
でで虫の前は匍ふべき面ばかり 楸邨
雨あがる樹下石上の蝸牛 楸邨
園児らに翳多き径かたつむり 双魚
蝸牛殻新しく死新し 誓子
一つ葉に一つのあるじ蝸牛 青畝