和歌と俳句

蝸牛 かたつぶり ででむし

庭下駄は風雨に古りぬ蝸牛 秋櫻子

蝸牛や畳を這へる風雅者 喜舟

でゝ虫にずるずるぬけし腐草かな かな女

蝸牛や風のまにまに毛雨舞ひ 青畝

蝸牛や降りしらみては降り冥み 青畝

でで虫に滝なす芭蕉広葉かな 茅舎

一心にでで虫進む芭蕉かな 茅舎

かたつむり背の渦巻の月に消ゆ 茅舎

あかるさや蝸牛かたくかたくねむる 草田男

蝸牛やどこかに人の話し声 草田男

かたつむり南風茱萸につよかりき 蛇笏

水あかり蝸牛巌を落ちにけり 蛇笏

笹枯れて白紙の如しかたつむり しづの女

葉と落ちし蝸牛幹をのぼるなり 石鼎

おとどしの蝸牛ならんおほふとり 石鼎

子をあまたつれて蝸牛跳梁す 石鼎

蝸牛いつか哀歓を子はかくす 楸邨

でで虫ら舗道横ぎり牛乳来る 茅舎

かたつむり露の葛の葉食ひ穿ち 茅舎

人に似てかなし天気の蝸牛 立子

蝸牛の角のはりきる曇りかな 犀星

東京の辺や蝸牛の角伸びて 波郷

蝸牛や雨ばかりなる駒場町 波郷

蝸牛やくるぶし冷ゆるの風 桂郎

殻のうちししむら動く蝸牛 誓子

殻の渦しだいにはやき蝸牛 誓子

巌の秀に殻をすすむる蝸牛 誓子

蝸牛角ならべゆき相別る 誓子

殻曳いてややに行きあふ蝸牛 誓子

芭蕉葉にはつきり一つ蝸牛 杞陽

芭蕉葉の裏に表に蝸牛 杞陽

文鎮の如く芭蕉に蝸牛 杞陽

蝸牛渦の終りに点をうつ 誓子