癪に効く湯へ声おとす高嶺蝉
蝉の日や研れて匂ふ鎌の反り
ででむしやダムに長居の袋雲
暑き日のぴりぴりわたる人造湖
一発のかみなり湖に何か銹ぶ
つつましき青田が北に人造湖
合歓咲いて三鬼きさうな関所跡
時の日を歌書へ爪立ち古書漁る
虚子と二字窟の墓に緑差す
涼潔し竹箒侍す虚子の墓
水飲みて振り腰涼し家鴨の子
白檀の扇ぞ撓ふ餓鬼忌かな
気落ちして足拭きをるや蛍くる
冷麦に朱の一閃や姉遠し
灯蛾死して羽おく一夜漬の稿
峰雲や海豚引き抜く餌の力
ねんごろに牛が尾を振る水すまし
人の背はみなさみしいね西日負ふ
アカシヤ散る養老院の犬育ち
塩舐めて手足さみしや柚子の花
神童の持つ指白め鳴く蝉よ