和歌と俳句

青梅 梅の実

主人今暗き実梅に筆すすむ 虚子

日当れば実梅一々数ふべし 虚子

青梅の落ちたる音のひろがらず 綾子

青梅や昼もやす火の澄みとほる 槐太

塔中の実梅を女人袂にす 槐太

青梅の酸にとほくより責められて 不死男

青梅が閻にびつしり泣く嬰児 三鬼

青梅の一つ落ちたるうひうひし 虚子

深夜の歯白し青梅落ちつづく 三鬼

青梅の犇く記憶に夫立てり 多佳子

青梅の落つる大地や雨上り 立子

青梅の数増す病身爪立てば 節子

百顆の梅妻はいそいそ酒かもす 青邨

うかがへば實梅つぎつぎ葉を出づる 爽雨

青梅が痩せてぎつしり夜の甕 三鬼

青梅の秩父入り来て雨あがる 源義

見下ろせば雨の鋪道の青梅売 波郷

ふるさとや実梅を量る母の枡 汀女

夕日いま高き実梅に当るなり 立子

青梅や怠りて子に蔑さるる 波郷

青梅びつしり女と女手をつなぎ 三鬼