和歌と俳句

薄暑

藤の雨漸く上り薄暑かな 虚子

鍬置いて薄暑の畦に膝を抱き 虚子

薄暑なり光り飛び交うもの殖えて 草城

はんけちのたしなみきよき薄暑かな 万太郎

娘何か云へり薄暑の窓に立ち 虚子

百合の葉の蟲みつけたる薄暑かな 万太郎

伸びきはふ蔓のひかりの薄暑かな 万太郎

まだ荒るる沖のあかるき薄暑かな 万太郎

薄暑なり甘ゆるハワイアンギター 草城

突然に薄暑となりし金沢に 立子

浮くものを軽鳧ときめたる薄暑かな 

浅草のむかしの空の薄暑かな 万太郎

ものわすれわらふほかなき薄暑かな 万太郎

薄暑の日五彩あやしく壁にゆらぐ 秋櫻子

べんたうのうどの煮つけも薄暑かな 万太郎

岩群れてひたすら群れて薄暑かな 万太郎

汐引けば岩々荒るゝ薄暑かな 真砂女

百合しろく薔薇淡紅に薄暑 万太郎

銀行のマッチもメモも薄暑かな 万太郎

石庭の白砂ひかる薄暑かな 万太郎

打水をする住吉に来て薄暑 汀女

長停電薄暑の長野駅の鳩 立子

薄暑来ぬ人美しく装へば 立子

集りし一日信者寺薄暑 立子

山荘は南西に縁富士薄暑 立子

旅愁のひとり離れて黙す夜の薄暑 悌二郎

週末をさけて薄暑の城ケ島 立子

旅に過ぐ薄暑の漆器町匂ふ 爽雨

塩ふつて薄暑の昏らさ卓にあり 双魚