夏草のほとぼり冷むる月夜かな
夏草に砕けて赤き煉瓦かな
夏草に日落ちて馬車が迅くなる
夏草や心中者の下駄二足
しこぐさの茂りておぞや刈られけり
高牧へ道うねくねや草いきれ
汗馬の筋張る腹や草いきれ
そよ風を受くる早苗のいとしさよ
しみじみと青稲暮るる身のまはり
麻負うて一にん来る夕日かな
月明や廃墟このあたり麻残る
城門を出て坂道や麻の月
棄猫のないて麻畑月夜かな
さらさらと蝮隠れぬ青すすき
石菖にすがりて昼の白蛾かな
すはすはと石菖生へり水ほとり
ぼうたんや眠たき妻の横坐り
うたたねの覚めしたまゆら牡丹散る
白猫の眠りこけたる牡丹かな
ぼうたんやたわたわとして三五輪
玄海のうしほのひびく牡丹かな
芍薬に頭痛はげしき女かな
芍薬を剪るしろがねの鋏かな
薄月や風に触れゐる芥子の花
ひなげしや妻ともつかで美しき