和歌と俳句

日野草城

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ゆあみしてほのかに眠し薔薇匂ふ

廃園やあけぼのひらく薔薇の花

湯上りや薔薇の香と搏つしやぼんの香

白日や少女提げたる薔薇の紅

たわやめのさうびを摧く瞋かな

清閑や香を吐きやまぬ百合の花

白百合の芳芬を聞く静こころ

白百合を畏れて飛べり蠅一つ

卓の百合眞向き匂ふ鼻の先

紅蓮靄を払うてひらきけり

べにはすや日闌けし水に悩ましき

朝風や相搏ちひらく蓮の花

流れ矢の蓮田へ落ちし暮色かな

一茎の白あやめなりいさぎよき

短夜の灯影更けけり白あやめ

日おもての薄葉明るし金蓮花

一もとの葵花咲き葵の句

花瓜や鱗乾きて烏蛇

空華のあはれに落つれ花胡瓜

朝顔に涼しくあたる朝日かな

朝顔も世話女房の風雅かな

朝顔やそぞろ覚ゆる宿酔

空よりも碧き朝顔咲きにけり

道のべの昼朝顔はしぼみたり

物蔭の昼朝顔や小洗濯