和歌と俳句

日野草城

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潮風に吹かれたかぶり夏羽織

旅果つや皺の出来たる夏羽織

嵩もなう解かれて涼し一重帯

帯どめの翡翠は青し一重帯

水の粉や胴ほそぼそと一重帯

通り雨に逢うて戻りぬ一重帯

夏帯や自ら疎む石の胎

白服や循吏折目を正しうす

白服や五日の旅によごれたり

はつたいの日向臭きをくらひけり

団々として白玉の七つ八つ

白玉や夏書疲れに参らする

白玉や朧々として水の底

しら玉の雫を切つて盛りにけり

白玉やひんやりとして舌の上

ところてん煙の如く沈み居り

帷子の腋背涼しところてん

心太<すする漢の真顔かな

心太喰うて涼しきのんどかな

水無月の落葉するなり心太

心太うす味もちて啜らるる

瓜揉や相透く縁のうすみどり

瓜揉の酢の利き過ぎし月夜かな

冷奴うけとる月の舌涼し

口中に漂ふ柚の香冷奴