老鶯啼いて山行の餘情かな
かはせみや水つきかかるふくらはぎ
蛇を見て寒き心や日のさかり
鳴きやんでまなこ寂しき河鹿かな
青蛙ちまちまとゐる三五匹
いとしさに堪へて見てゐる青蛙
いとしさに見つつし飽かね青蛙
青蛙乗りゐし如露をはづしけり
枝蛙青く跳びけり砂の上
ひらめきし蜥蜴の背や苺畑
瓜番が雷死の葬や青とかげ
蚊を呑んで大やもり眼をしばたたく
朝潮のさやさや青きくらげかな
夕潮にほかりほかりと海月かな
夕凪やまどかに浮ける大海月
沈璧の浮み出でたる海月かな
大き蟹愚かなまなこもちにけり
松明の長き煙やほととぎす
月しろのにはか明りやほととぎす
林檣によろばふ月やほととぎす
風前の灯の穂危うしほととぎす
待ち出づる月は端山やほととぎす
ほがらかに月夜更けたりほととぎす
苑日々に草深うなる鹿の子かな
女しきりに鹿の子愛づる暮色かな
丘越えて親に逢うたる鹿の子かな