和歌と俳句

日野草城

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薔薇を瞥し婦人記者薔薇のことは言はず

紅薔薇の咲き切つてをり客長座

夏立ちぬいつもそよげる樹の若葉

夏立ちし日の焼鯖の馥郁と

美しき五月の晴の日も病みて

病みぬれば蒲焼を喰ふ奢かな

花過ぎて寂かなりけりつつじの木

ただ青し花終りたるつつじの木

新緑の暮るるのみなり肩の凝

微熱あり夕づく若葉静謐に

新樹濡れあたたかき牛乳なみなみと

新緑やかぐろき幹につらぬかれ

三春経ぬ薬の味のかはりつつ

美しき五月微熱を憂しとせぬ

薄暑なり光り飛び交うもの殖えて

病快し宵の明星真額に

金星にひびかふ麦の夜風かな

いとけな手をたづさふる夕歩き

の午後妻子ひもじくわれも亦

とりわきて娘のひもじがる夏ゆふべ

芍薬の花を愛でつつひもじけれ