和歌と俳句

日野草城

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白き雲湧きかがやきて城古りぬ

石だたみひかげは露のすずしくて

かいまみをゆるさぬ垣の薔薇咲けり

夏旺ん婦女體線をあらはにす

タイピスト倦めり日焼の腕長く

上衣とり古クレープは白からず

生活を担ひ疲れぬ笑はざる

冷え徹る麦茶の碗を掌に愉し

卓の前白日の夢の海碧し

いきものの人間にほひ岩灼くる

肌寄せてをとめの攀づる岩荒し

青空に浮びてをとめ岩を攀づ

山の陽に素顔でわらふをとめらよ

陋巷の裏へ夏野が来て青し

陋巷の夏竹床几新しく

陋巷の灯に揉瓜の豊富なる

陋巷の婦女の暑がる膚白し

璞の青きメロンを切り惜む

頬白くくちびる紅くセル碧き

青空がみなぎりセルが白つぽい

をなごらもどてら着ぶくれさみだるる

さみだれの夜の閑散の湯の深さ

初蝉や著莪は仔細に美しき

鳴いて天の橋立よこたはる

瑠璃盤となりて五月の海遠し

浜茄子は風に吹かれて紅い花