白き雲湧きかがやきて城古りぬ
石だたみひかげは露のすずしくて
かいまみをゆるさぬ垣の薔薇咲けり
夏旺ん婦女體線をあらはにす
タイピスト倦めり日焼の腕長く
上衣とり古クレープは白からず
生活を担ひ疲れぬ笑はざる
冷え徹る麦茶の碗を掌に愉し
卓の前白日の夢の海碧し
いきものの人間にほひ岩灼くる
肌寄せてをとめの攀づる岩荒し
青空に浮びてをとめ岩を攀づ
山の陽に素顔でわらふをとめらよ
陋巷の裏へ夏野が来て青し
陋巷の夏竹床几新しく
陋巷の灯に揉瓜の豊富なる
陋巷の婦女の暑がる膚白し
璞の青きメロンを切り惜む
頬白くくちびる紅くセル碧き
青空がみなぎりセルが白つぽい
をなごらもどてら着ぶくれさみだるる
さみだれの夜の閑散の湯の深さ
初蝉や著莪は仔細に美しき
瑠璃盤となりて五月の海遠し
浜茄子は風に吹かれて紅い花