くたくたと散つてしまひぬ薔薇の花
茨咲くや二三荷流す牛の糞
赤う咲いてそらぞらしさや毒うつぎ
炭竃の煙らで涼しうつぎ咲く
麦刈や娘二人の女わざ
麦刈の大きな笠に西日かな
麦刈れば水到り田となりぬ
麦飯に痩せもせぬらり古男
石に植えてさつきの花の咲きにけり
板橋や踏めば沈みてあやめ咲く
わら家根や一八咲いて橋の下
短夜や枕上なる小蝋燭
短夜や梁に落ちたる大鯰
短夜や舟してあぐる鰻縄
家鳩や二三羽降りて明易き
男子生れて青山青し夏の朝
渋柿の落花する井を汲みにけり
泥塗つて柘榴の花の取木かな
柘榴ちつて珊瑚瑪瑙をしく庭よ
蚕飼して夜明くる家や栗の花
ふきかへて栗の花散る藁家かな
十薬や石垣つづく寺二軒
鬼灯の垣根くぐりて咲きにけり
南瓜咲いて西日はげしき小家かな
五月雨や起き上りたる根無草