玄関に大きな鉢の牡丹かな
ぼうたんの蕾に水をかくるなよ
衣更野人鏡を持てりけり
菖蒲かけて雀の這入る庇かな
庵主の菖蒲茣蓙して薄緑
門の内馬もつないで 幟かな
飛騨山の質屋も幟たてにけり
鯉幟眼に仕掛ある西日かな
菖蒲太刀ひくづつて見せ申さばや
酒飲まぬ豪傑もあり柏餅
老ぼれて武士を忘れぬ端午かな
薬玉をうつぼ柱にかけにけり
新茶して五ヶ国の王に居る身かな
寺焼けて門に玉巻く芭蕉かな
大雨に獅子を振りこむ祭かな
万燈を消して侘しき祭かな
夏籠や仮に綴ぢたる薄表紙
夏籠や月ひそやかに山の上
たかんなに縄切もなき庵かな
焼跡やあかざの中の蔵住ひ
大葉子の広葉食ひ裂く雀かな
芥子の花がくりと散りぬ眼前
道端に縄垣したり罌粟の花