和歌と俳句

村上鬼城

瓜小屋に伊勢物語哀れかな

瓜小屋や夕立晴れて二日月

球を吐く水からくりや心太

祇園会や万燈たてて草の中

日盛や合歓の花ちる渡舟

炎天や天火取りたる陰陽師

松風に近江商人昼寐かな

念力のゆるめば死ぬる大暑かな

山畑に巾着茄子の旱かな

雨乞や僧都の警護小百人

でで虫の草に籠りて土用かな

梅干や中山道の小家勝ち

夏痩や今はひとりの老の友

葭簀して夕顔の花騙しけり

水泡の相寄れば消ゆ蓮の花

茗荷汁にうつりて淋し己が顔

茗荷汁つめたうなりて澄みにけり

茄子汁の汁のうすさや山の寺

手燭して茄子漬け居る庵主かな

仙人掌の奇峰を愛す座右かな

もろこしの花の月夜に住む家かな

草箒二本出来たり庵の産

秋近し土間の日さること二寸