燈台の光源夏のゆふ迫る
田植衆憩ひて飲みも食ひもせず
手に挟み牡丹の面をまざと見る
鰹釣る直立海に上下して
太陽の出でて没るまで青岬
鵜の川の迅さよ時の流れより
鵜篝は靡きてすすむ幡なして
鵜篝の早瀬を過ぐる大炎上
疲れ鵜が吾ゐる舟にみな上る
豹檻に飼はれて蟻を舐れるよ
新緑や柔腹つけて豹匐ふ
授乳する同じ緑蔭豹の檻
電車迅く涼しや顔のはためきて
二百万納骨在りて嶺青む
レールよりレール岐れて青峡へ
旧銅山いまは湖辺の青山にて
万緑の中放棄放棄林
曝涼にけふは昇殿地を見下す
秋晴に銅像拳握りしめ
霧が凝る山行の吾が羅紗服地
頂上のたしかな平霧の海
冬山にピッケル突きて抜きしあと
岩群の焚火岩擲げ込みて消す
寒雲擦過してゆく吾が頭上
頭上過ぎ去りし寒雲高さつづけ
冬山を石の落ちゆく音落ちゆく音