和歌と俳句

黒柳召波

酔臥の妹なつかしや年忘

燭まして夜を続にけり年忘

寒声や京に住居の能太夫

橘のむかし文庫やきぬくばり

百疋は握る使や衣配

餅つきや焚火のうつる嫁の皃

恥しらぬ老の戯れや節季候

掛乞や雪ふみわけて妹が許

書出しに小町が返事なかりけり

うれしさよ御寺へ年木まいらせて

追難うらの町にも聞えけり

先生も人のす ゝめや厄おとし

節分やよい巫女誉る神楽堂

節分をともし立てたり獨住

宵闇に春ぞ立ゐる十日ほど

月もなき杉の嵐や年籠

行としや月日の鼠どこへやら

口上のせいぼ使や古男

年のいそぎ聖の衣みじかしや

馬の背にまたる ゝ銀やとしのくれ

ゆくとしや六波羅禿おぼつかな

常よりも遊ぶ日多しとしの暮

年の市や馬士によみやる送リ状

名の高き茶入も見けり年のくれ

竃塗の心しづかにとしの暮