和歌と俳句

黒柳召波

寒菊や猶なつかしき光悦寺

寒ぎくや四ツまで園の日のあたる

冬つばき難波の梅の時分哉

郊外に酒屋の蔵や冬木だち

垣結へる御修理の橋や冬木立

扨あかき娘の足袋や都どり

子の母よいく度結ぶ足袋の紐

競べあふ胝の手先や寮の尼

火桶はる暦わびしき月日かな

山伏も舞子も住て火桶

身に添はで憂しやふとんの透間風

大原女の足投出していろり

しづかなる柿の木はらや冬の月

温石の百両握るふゆの月

小灯に葱洗ふ川や夜半の月

鉢た ゝき頭巾まくれて鬢の霜

愚なる御僧と申せ鉢叩

鉢た ゝき右京左京の行戻

無縁寺の夜は明にけり寒ねぶつ

茶を申をうなの声や寒念仏

寒垢離の風に乗行歩ミ哉

鏡とらば両の鬢や枯尾花

門口に歩ミの板や煤払

一函の皿あやまつやすゝ払

すゝ掃や宵のさむしろ大書院