寒菊や猶なつかしき光悦寺
寒ぎくや四ツまで園の日のあたる
冬つばき難波の梅の時分哉
郊外に酒屋の蔵や冬木だち
垣結へる御修理の橋や冬木立
扨あかき娘の足袋や都どり
子の母よいく度結ぶ足袋の紐
競べあふ胝の手先や寮の尼
火桶はる暦わびしき月日かな
山伏も舞子も住て火桶哉
身に添はで憂しやふとんの透間風
大原女の足投出していろり哉
しづかなる柿の木はらや冬の月
温石の百両握るふゆの月
小灯に葱洗ふ川や夜半の月
鉢た ゝき頭巾まくれて鬢の霜
愚なる御僧と申せ鉢叩
鉢た ゝき右京左京の行戻
無縁寺の夜は明にけり寒ねぶつ
茶を申をうなの声や寒念仏
寒垢離の風に乗行歩ミ哉
鏡とらば両の鬢や枯尾花
門口に歩ミの板や煤払
一函の皿あやまつやすゝ払
すゝ掃や宵のさむしろ大書院