寒鯉を抱き余してぬれざる人
冬日落ちる頭の影の塵一握り
甍軽うて易の気の満つ風呂吹よ
冬海に杖を挿し置き婆来たる
闇老いて葱浮々と洗われけり
暗を見る小石嵌まれり冬の山
枯草や思わぬ人に摘まれ行く
凍て蝶や餅が通れば倒れて起つ
着物着てゆたかに接す冬の海
人近き餅のひかりや冬の海
晩年や雪採れば餅近づきぬ
冬海の陸を侵かさぬ着物かな
餅は皆にじり居るらし雪の暮
土に居る感なき昼や冬の蝶
西方も粉雪の眉毛充満す
空棺を供えたりけり水仙に
殺佛や枯野をわたる破戒佛
枯草を扇ぎいたりき旅老人
一休の体重かかる冬の蝶
水仙や乗雲の徒の散りじりに
泥鰌らも知りぬいて居る葱畑
生葱のうつる古池四五在らむ
葱食えば浮世石橋黄なるかな