和歌と俳句

永田耕衣

顎添に枯草まがる思いかな

寂しくて道のつながる年のくれ

晩年や狭庭を踏むも天揺るる

七人も一人に同じ冬の芹

寒鮒の古池を出ぬ喫茶かな

恥かしき狭庭の冬や秘晩年

葱汁や老少先ずは空の中

落日の肌に枯草生えにけり

老体を刺して枯草微塵かな

猫じやらし水をやるのに枯れて行く

一茶忌を移る棺形日向かな

枯れて居る時は過ぎつつ草の道

茶の花の萎れて散るも昔かな

荘子まで出てくる雨や石蕗の花

霜の原水を通さむ思いあり

何もせぬ山山こちら冬の蠅

死ぬまでに死んで居る人雪の恥

白菜を踏まむとしたり最晩年

太陽はの此方に寂しきかな

繰り返し氷の張るは恐ろしき

冬の暮地面の人の口の向く

枯蓮や我が道を行く人のむれ

うどん屋まで何メートルの憂き我ぞ