踊り子にトマトのこれる畑かな
秋風に瓣ゆるみたる薔薇かな
わが足へ如来の御瞳や秋の草
鶴降りて秋草くもるところかな
蟲籠にほとけのともしもつれあふ
秋の野に立つて秋野を見ざるなり
よこたはるからたち垣や秋の暮
蝶波にとまりてやすし十三夜
秋風やからみかはりし水馬
くろかみを束ねておもし栗拾ひ
まんなかを刈りてさみしき芒かな
大日如来われもうつくし秋の草
死ぬ蝶は波にとまりぬ十三夜
路草にむかひて萎む木槿かな
天なるや童女の声の蟲の声
明かき野や蟲聴く人を失へる
秋の雲掌にあつまるを多としける
朝顔や到るところに友が待つ
天の川硝子こはれし家に靠れ
棘の露ひとのまなこの移り行く
落し水母の白髪のきはまりぬ
七夕や風にひかりて男袖
朝の日の母を訪はばや蛍草
母を訪ふ足音ながらに秋の風
うそ寒や草の根這へる裏の山