秋雨や空杯の空溢れ溢れ
鯊釣れば雨の神社に犬跳ねて
鈍鳥身鳴るに銀河の粉なの附く
夢みて老いて色塗れば野菊である
新月や転び寝地蔵に添い寝の人参
骸骨が舐め合う秋も名残かな
さよならをいつまで露の頭蓋骨
野菊道数個の我の別れ行く
山中や何れか固き鼻と栗
着物新しく菌を眺めかな
顔の眼は頭の眼なり鳳仙花
海よりも老いたる露よ猪よ
無花果を盛る老妻を一廻り
身に靡き入る秋草を追うだけだ
己が種に逢いたき桃や天の川
秋の暮杓無くば水長からん
墓のごと虚空も起てり墓参り
掌に溢れ顕つ秋雨の苦痛かな
桔梗見る眼を遺さばや素晩年
紙魚老いて白毫の如し秋の暮
椎茸の見給うは倭が和服かな
秋立つや皆在ることに泪して
黄金の真実人体秋の暮
老脳を跳ね出る月の眉毛かな