赤彦
人間の我の願ひはいと脆し夜は明けはなる朝顔の花に
赤彦
朝顔の花に向ひて不覚なる涙と思へど疲れて流るる
赤彦
咲き盛る朝顔の露にさはりたりほとほと夜は明けむとするも
赤彦
電燈に照らされてゐる朝顔の紺いろの花暁近づけり
晶子
朝顔はわがありし日の姿より少しさびしき水色に咲く
朝顔に夢中になりし法師かな 茅舎
朝顔のゆらぎかすかにも人の足音す 山頭火
海鳴きこゆ朝顔の咲きけるよ 山頭火
晶子
朝がほは芝居のいろの紫も恋の心のくれなゐも咲く
朝顔の裂けてゆゆしや濃紫 石鼎
草紙絵のごと朝顔を盆に摘む かな女
晶子
雨の日にいぬころ草のささへたる小く白き朝顔の花
晶子
星のごと雲を這ひても咲きぬべき白くあてなる朝顔の花
朝顔や絡まり合ひて幾色ぞ 花蓑
晶子
風来り白き朝顔ゆらぐなりこだまが持てるくちびるのごと
朝顔や土に匍ひたる蔓のたけ 龍之介
朝顔や鉢に余れる蔓の丈 龍之介
朝顔や静かに霧の当る音 花蓑
朝顔や風吹き上げて蚊帳空し 花蓑
只一つ白朝顔の咲きし庵 石鼎
山下りて朝顔涼し京の町 青邨
利玄
朝涼しみ朝顔の花のいろよさのあなみづみづし一輪一輪
利玄
朝涼の静けさに見る目の前の瑠璃あさ顔の輪の大きさ
父子で住んで言葉少なく朝顔が咲いて 放哉
朝顔の白が咲きつづくわりなし 放哉
朝顔や檜垣にのりししだり咲 風生
朝顔や機織りに来る人の妻 月二郎