炉びらきや紅裏見ゆる老のさび
口きりや此寒空のかきつばた
わが庵ににほひあまるや冬牡丹
はつ霜や野わたしに乗馬の息
舟慕ふ淀野の犬やかれ尾花
石寒し四十七士が霜ばしら
丹頂の頭巾似あはむ霜の鶴
眦に比叡のはなれぬ 寒かな
明ぼのやあかねの中の冬木立
冬木だち月骨髄に入夜哉
鴬のうしろ影見し冬至哉
鰒喰し犬狂ひ臥かれ野かな
大仏を見かけて遠き冬野かな
土までも枯てかなしき冬野哉
凩にあらそふごとし鐘の声
顔見せや北斗に競ふ炭だはら
かほみせや矢倉に起る霜の声
河豚好む家や猫迄ふぐと汁
活て居るものにて寒き海鼠哉
痩葱にさかな切込磯家かな
やすき瀬や冬川わたる鶴の脛
馳折をしばらくおろす神楽哉
夜神楽や水涕拭ふ舞の袖
初雪のしるしのさほや艸の茎