日野草城
秋祭すみし田舎の日向かな
ほかほかと背あたたかし秋祭
山路来てここに村あり秋祭
里親の心づくしや秋祭
裏戸なる如意は閑かや秋祭
地蔵会の提灯赤し雨催ひ
裏の寺十夜の鉦をならしけり
お十夜やすこし化粧ひて寺の妻
八日目のかかる月夜や十夜寺
明き灯に新酒の酔の発しけり
袖口の綻び紅し新酒つぐ
早稲酒や魂遥かなる酔心地
早稲酒に樽の木の香もありにけり
きよらかに白盃や今年酒
手力や新酒の樽に錐を立つ
呑口をほとばしりたる新酒かな
今年米土にこぼれて輝けり
栗飯や寮生卓に目白押
栗飯やほのぼのとして塩加減
寂しくばたらふく食しねむかご飯