和歌と俳句

日野草城

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天晴るや蓬々として破芭蕉

木犀の匂かくれぬ日和かな

香を尋めて来て木犀の花ざかり

朝風に大弧描いて一葉かな

乾きたる砂のけうらや桐一葉

一葉散るきのふが千秋楽の劇場の前

椎の実のはすかひに飛ぶ嵐かな

椎の実に鼻はたかれぬひきがへる

庭古りて日にけに落つる木の実かな

今落ちし木の実拾ひぬうすみどり

あひびきに尽きぬ話や木の実降る

持つて寝る母の乳房や木の実雨

青空に熟柿崩るる天気かな

高枝夕日まぼしくもぎにけり

渋柿の色艶栄えてあはれなり

渋柿のわりなき艶をながめけり

青ふくべ一つは月にさらされて

遠きより晴れ寄る原や秋の草

一廓は市営住宅秋の草

水筒の水が鳴るなり草の秋

山号を艸山といふ草の秋