落葉あつめて墓守の焚く煙ひとすぢ
墓のしじまを身ひとつに落葉焚く
私ひとりでうららかに木の葉ちるかな
さむざむと鉢木の雨の赤い実よ
あかり消すやこころにひたと雨の音
一葉落つればまた一葉落つ地のしづか
一葉一葉おとして樹立澄みかへる
大銀杏しづけさのきはみ散りそめし
月澄むほどにわれとわが影踏みしめる
秋おだやかなお隣りの花を見るなり
けふも托鉢ここもかしこも花ざかり
秋風の木の皮がはげる山寺
菩提樹によりかかりまた月と逢うてゐる
松はみな枝垂れて南無観世音
松風に明け暮れの鐘撞いて
ひさしぶりに掃く垣根の花が咲いてゐる
分け入つても分け入つても青い山
しとどに濡れてこれは道しるべの石
炎天をいただいて乞ひ歩く
鴉啼いてわたしも一人
生死の中の雪ふりしきる
木の葉散る歩きつめる