雪虫のゆらゆら肩を越えにけり
山の木の日深くなれば葉降らしぬ
木の雪へ車ひびかし晴れて来る
雲がゐる山へ田なして寒山葵
地の果てゆ草枯れ寄する二克山
舞ひ落つる葉に寄る鮠の痩せてけり
人込みに白き月見し十二月
えにしだの細きにも雪つきそめし
田の家の今ともしける夕時雨
雪吹くや群をはなれし鵜二三羽
椅子に凭る雪白くなるしまらくを
時雨鳥しばし垣穂に沿へりけり
おもふこと遠くもなりぬ風邪に寝て
咳呼んで牀頭月のさし来り
母子寮の厨に見えて葱白し
武蔵野や流れをはさみ葱白菜
鰤あぐる島の夕べを時雨けり
枯草のそよげどそよげど富士端しき
雪屋根の眉に迫れり咳をのむ
月あらむ櫺子明りを柚子風呂に
年は徂く伊豆の泊りの風荒し
大北風にあらがふ鷹の富士指せり