好忠
庭の面になづなの花の散りかふを春まで消えぬ雪かとぞ見る
拾遺集・雑春 藤原長能
雪をうすみ垣根につめるからなづななつさはまくのほしき君かな
俊頼
君がため 夜ごしに摘める ななくさの なづなのはなを 見てしのびませ
よく見れば薺花さく垣ねかな 芭蕉
妹が垣根三味線草の花咲ぬ 蕪村
節
桑の木のうね間うね間にさきつづく薺に交る黄花の薺
白秋
たんぽぽに誰がさし置きし三すぢほど日に光るなり春の三味線
庵を出でて道の細さよ花薺 碧梧桐
なつかしき道選り歩く花薺 虚子
猫のゐてぺんぺん草を食みにけり 鬼城
薺咲きぬ三味線草にならであれ 鬼城
千樫
わが子らとかくて今日あゆむ垣根みちぺんぺん草の花さきにけり
ひつそりかんとしてぺんぺん草の花ざかり山頭火
よべの雨水を溜めたり花薺 青邨
畦漏の走りわかれや花薺 素十
花薺揺れ触る水輪水たまり 草田男
昨日より今日新しい薺花 綾子
花薺片々多忙にすぎゆく日 草田男
旅淋し薺咲く田の涯しらず 青畝
墓にまぎれ曾良の墓あり薺咲く 林火
敷かれつつなづな花あげ雪の果 爽雨
花なづな母死後木戸に錠つけて 双魚
花なづなこよみの裏のさびしさは 双魚
花なづな日暮は口がさみしくて 双魚
柩舁く足がそろひて花なづな 双魚