北窓をこぢ放しけり鶏の中
百姓に雲雀揚つて夜明けたり
曇る日や高浪に飛ぶむら燕
田のくろに猫の爪研ぐ燕かな
濁流や腹をひたして飛ぶ燕
大滝を好んで飛べる燕かな
春雨や拝殿でする宮普請
新らしき蒲団に聴くや春の雨
春雨やたしかに見たる石の精
滋恩寺の鐘とこそ聴け春の雨
畑打のよき馬持ちて踏ませけり
種蒔いて暖き雨を聴く夜かな
種蒔や縄引き合へる山畑
妹が垣伏見の小菊根分けり
菊根分呉山の雪の覚束な
西日して木の芽花の如し草の宿
木の芽してあはれ此世にかへる木よ
椿咲く親王塚や畑の中
石の上に椿並べて遊ぶ子よ
雨の中に落ちて重なる椿かな
一つ残りて落ち尽したる椿かな
柿の木に梯子をかける接木かな
落葉して心許なき接木かな