花ちりて地にとどきたる響かな
花ちりて春敲御門祭静かなり
呼べど返らず落花に肥ゆる土の色
篝火の尾上にとどく桜かな
うつろ木のたたけば鳴りて桜かな
里人や古歌かたれ山桜
庭の雨花の篝火消して降る
無信心の顔見られけり寺の花
花雲のかかりて暮れぬ三軒家
里人の堤を焼くや花曇
傘について御室の花やほされけり
花の色もほのかに老木櫻かな
八重櫻地上に畫く大伽藍
大錨載せて漕出ぬ花見舟
うす寒く老の假寝や花曇
新らしき笠のあるじに風光れ
菜種咲いて風なき国となりにけり
菜の花の夜明の月に馬上かな
川風に吹き戻さるるてふてふかな
てふてふの虻に逃げたる高さかな
てふてふや草にもどりて日暮るる
雀子や親と親とが鳴きかはす
雀子の大きな口を開きにけり
市に住んで雀の親の小ささよ