三月を此能故に冴え返る 子規
晶子
三月は柳いとよし舞姫の玉のすがたをかくすと云へど
晶子
やはらかに心の濡るる三月の雪解の日より紫を着る
晶子
くれなゐの桃のつぼみを思ひつつ薬をのみぬ病める三月
晶子
三月や朝夕雲のゆきかひにむらさきがちの空となりゆく
三月の雑誌の上の日影かな 普羅
三月や廊の花ふむ薄草履 蛇笏
三月や大竹原の風曇り 龍之介
三月の筆のつかさや白袷 蛇笏
三月や茜さしたる萱の山 龍之介
三月の鳩や栗羽を先づ翔ばす 波郷
塔の屋根青き三月来りけり 万太郎
茂吉
三月の光となりて藁靴とゴム靴と南日向に吾はならべぬ
三月の産屋障子を継貼りす 波郷
茂吉
三月の空をおもひて居りたるが三月になり雪ぞみだるる
茂吉
つつましきものにもあるかけむるごと最上川に降る三月のあめ
茂吉
三月の陽しづまむと南なる五つの山の雪にほはしむ
雨がちにはや三月のなかばかな 万太郎
三月風焼跡の馬の臀を搏つ 波郷
三月風胸の火吹かれ打臥すも 波郷
三月や水をわけゆく風の筋 万太郎
勤めては三月夢のきゆるごとし 龍太
三月の峡の水漬田ほの赤し 波郷
三月やモナリザを売る石畳 不死男
黄金指輪三月重い身の端に 三鬼
三月や風ふきおこる夜半の音 万太郎
三月や月をわすれし木々の枝 万太郎
三月や朝より鯛をのせし舌 万太郎