さらさらと衣を鳴らして梅見哉
戛と鳴て鶴飛び去りぬ闇の梅
墨の香や奈良の都の古梅園
梅の宿残月硯を蔵しけり
縁日の梅窮屈に咲きにけり
梅の香や茶畠つづき爪上り
灯もつけず雨戸も引かず梅の花
梅林や角巾黄なる売茶翁
上り汽車箱根を出て梅白し
月升つて枕に落ちぬ梅の影
紅梅や物の化の住む古館
紅梅や姉妹の振る采の筒
紅梅や文箱差出す高蒔絵
藪の梅危く咲きぬ二三輪
無作法にぬつと出けり崖の梅
梅一株竹三竿の住居かな
ごんと鳴る鐘をつきけり春の暮
炉塞いで山に入るべき日を思ふ
白き蝶をふと見染めけり黄なる蝶
行春や紅さめし衣の裏
紫の幕をたたむや花の山
花の寺黒き仏の尊さよ
寺町や土塀の隙の木瓜の花
自転車を輪に乗る馬場の 柳かな