病む人の巨燵離れて雪見かな
凩に裸で御はす仁王哉
吹き上げて塔より上の落葉かな
時雨るるや右手なる一の台場より
洞門に颯と舞ひ込む木の葉かな
御手洗や去ればここにも石蕗の花
寒菊やここをあるけと三俵
冬の山人通ふとも見えざりき
閼伽桶や水仙折れて薄氷
凩に鯨潮吹く平戸かな
茶の花や白きが故に翁の像
時雨るるや泥猫眠る経の上
凩や弦のきれたる弓のそり
紅葉ちる竹縁ぬれて五六枚
草山の重なり合へる小春哉
時雨るるや聞としもなく寺の屋根
時雨るるや裏山続き薬師堂
時雨るるや油揚烟る縄簾
海鼠哉とも一つにては候まじ
弁慶に五条の月の寒さ哉
凩や滝に当つて引き返す
三十六峰我も我もと時雨けり
初時雨五山の交るがはる哉
我病めり山茶花活けよ枕元
号外の鈴ふり立る時雨哉
病む人に鳥鳴き立る小春哉