和歌と俳句

高浜虚子

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妻病みて春浅き我が誕生日

首縮め雪解雫を仰ぎつつ

解けかけし雪そのままに氷りたる

出不精の又出ず仕舞春寒し

山里の春はやうやく猫柳

下萌や石をうごかすはかりごと

下萌や地を動かして枕をうつ

山里のの花は猫柳

お茶うけの雛のあられに貝杓子

天井にとどけの高御座

カレンダーめくりあらはる雛の日

桃活けて雛無き草の庵かな

雛あられ四日の客に茶うけかな

道迷ひつつ春の水渉り

だき抱へ跳り渉りぬ春の水

春水に逆さになりて手を洗ふ

春雨の相合傘の柄漏りかな

春雨のかくまで暗くなるものか

川渉り来る人もある桃の宿

綿羊の子はおでこにて桃の花

山羊の子がしきりにはねる金ぽうげ

囀りの尾をしわめ鳴く鳥は何