妻病みて春浅き我が誕生日
首縮め雪解雫を仰ぎつつ
解けかけし雪そのままに氷りたる
出不精の又出ず仕舞春寒し
山里の春はやうやく猫柳
下萌や石をうごかすはかりごと
下萌や地を動かして枕をうつ
山里の雛の花は猫柳
お茶うけの雛のあられに貝杓子
天井にとどけ雛の高御座
カレンダーめくりあらはる雛の日
桃活けて雛無き草の庵かな
雛あられ四日の客に茶うけかな
道迷ひつつ春の水渉り
だき抱へ跳り渉りぬ春の水
春水に逆さになりて手を洗ふ
春雨の相合傘の柄漏りかな
春雨のかくまで暗くなるものか
川渉り来る人もある桃の宿
綿羊の子はおでこにて桃の花
山羊の子がしきりにはねる金ぽうげ
囀りの尾をしわめ鳴く鳥は何