かご燈籠さげて案内や蟲放ち
蟲の原来てせゝらぎを聞くところ
立ちよるや鳴音かへたる轡蟲
葡萄はこぶ大きな桶のみな古び
落ちて来る棗の小枝ゆるやかに
船員とふく口笛や秋の晴
下闇に袋のままの桃の店
桃青し赤きところの少しあり
少年に鬼灯くるる少女あり
石一つ崩して水を落しけり
稲舟にごとんと音す鵙高音
稲運び飽きし子稲架にぶら下る
稲刈の母目をつぶり乳をやる
夕ぐれの葛飾道の落穂かな
稲刈つて畦は緑に十文字
咳しつつ歩き来る子や稲埃
霊棚の稲穂よろこび玉ふらん
霊棚の稲も大豆も色づきて
小倉山見ゆ境内の紅葉折る
生つてゐて梨の形になつてきし
月に寝て夜半きく雨や紅葉宿
月までの提灯借るや紅葉宿
裏山の日なき紅葉に下りけり