ころげゐる芙蓉の珠や月明り
おほらかに裾曳く富士や花芒
蔓曳けばたばしり落つるぬかごかな
葉にのせて無花果呉れぬ二つ三つ
曼珠沙華互にしべのもつれつゝ
あるほどの茎たち竝び曼珠沙華
盆の月侘び寝の蚊帳にさしわたり
風鈴も秋立つ音となりにけり
鯊舟の舳に小さき錨かな
朝あけや流燈まろぶ波がしら
空の闇水の闇濃し流燈会
燈ともせば侏儒が遊ぶ走馬燈
龍宮に迫る一魚や走馬燈
燈を消してうす闇たのし星祭
塗盆に星の手向けの大西瓜
楓林にかゞやく秋日遠からぬ
鳴きやんで瓜をたべをり籠の蟲
鉦叩たゝき揃はず二つかな
古羽織着る夜もありぬつゞれさせ
子を連れて古女房や蝗とり
二つゐて親しむとなし秋の蠅