和歌と俳句

久保田万太郎

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あさがほのはつのつぼみや原爆忌

新盆やひそかに草のやどす露

新盆や桔梗に百合にかよふゆめ

新盆や切子藤浪與兵衛作

盂蘭盆や道であひたる俄雨

長つ尻いつものことや盆の客

風きよし切子の房をふきみだし

夜あがりの空たのめなき切子かな

簾垂る盆提灯はきえしかど

身の闇や盆提灯のきえしとき

去るもの日々にうとからず盆の月

ながれゆくなりわが手はなれし燈籠

ながれゆくなり波のくらきに燈籠の

ながれゆくなりわが魂のせて燈籠の

燈籠のよるべなき身のながれけり

日本橋室町鮒佐花火の夜

熱帯魚藻に身じろがず遠花火

雨やみをする間もあがる花火かな

一眠りしてさえし目やいなびかり

たよるたはたよらるゝとはかな

露しぐれ朴の巨木のかゝるとき

人めなき露地に住ひて秋の暮

秋の暮じつとみる手の白きかな

何事も胸にをさめて秋の暮

昔がたり露をちらしてとぶ

秋しぐれいつもの親子すゞめかな

羊羹の三色五色秋しぐれ

立ち枯れの蓼のいとゞし秋しぐれ

ゆく秋や三日みざりし庭の荒れ

まざまざとさしてくる日や暮の秋