傷兵に今日のはじまる東風が吹く
軍隊の短き言葉東風に飛ぶ
軍需輸送の重き車両ぞ雪を被来
吹雪く車輌征人窓に扉に溢れ
車輌吹雪き軍服床に藉きても寝る
やすまざるべからざる風邪なり勤む
寒行の眼鏡妖しく光り来る
壁炉美し吾れ令色を敢へてなす
壁炉あかしあろじのひとみひややかに
風鈴狂へり夕餉おくるる由ありて
悲憤あり吐きし西瓜の種子黒く
うつぶして華こそ勁し葦の華
英霊も秋風に夕まぎれつつ
子といくは亡き夫といく月真澄
金色の尾を見られつつ穴惑ふ
鈴懸黄樹を鉾とし葦を楯とし棲む
鵯問へば鵙が答ふる答へけはし
吾が胃吾が手に触れよりの夜長かな
大学生に買はれて哀し塩鰯
塩鰯啖つて象牙の塔を去らず
寒雀倣岸に蘆華猖介に
かく粗くかつ軽けれど今年米
枯銀杏空のあをさの染むばかり
年けはし炭欲る心打ち捨てたり
石炭を欲りつつ都市の年歩む