寒いぞよ軒の蜩唐がらし
稲妻や芒がくれの五十貌
寝むしろや野分に吹かす足のうら
星様のささやき給ふけしき哉
御仏の代におぶさる蜻蛉哉
追分の一里手前の秋の暮
秋風やつみ残されし桑の葉に
立臼に子を安置して盆の月
一人と帳に付たる夜寒哉
鎌の刃をくぐり巧者の螽哉
一人通ると壁にかく秋の暮
けさ秋や瘧の落ちたやうな空
稲妻にへなへな橋を渡りけり
露の玉つまんで見たるわらべ哉
名月や膳に這よる子があらば
木啄もやめて聞かよ夕木魚
虫の尻を指して笑ひ仏哉
一念仏申程して芒哉
膝抱て羅漢顔して秋の暮
人顔は月より先へ欠にけり
春日野は駄菓子に交る鹿の屎
酒尽て真の座に付月見哉
夕霧や馬の覚し橋の穴