朝顔の上から取や金山寺
朝顔や吹倒されたなりでさく
汁の実の足しに咲けりきくの花
蘭のかや異国のやうに三ケの月
膝の子や線香花火に手をたたく
初茸を握りつぶして笑ふ子よ
有合の山ですますやけふの月
深川や蠣がら山の秋の月
三絃で鴫を立たする潮来哉
秋風や谷向ふ行影法師
秋風にふいとむせたる峠かな
六十年踊る夜もなく過しけり
稲妻やかくれかねたる人の皺
我星はひとりかも寝ん天の川
鳴な虫あかぬ別れは星にさへ
墨染の蝶もとぶ也秋の風
旅人の藪にはさみし稲穂哉
町中や列を正して赤蜻蛉
海見る芝に坐とるや焼菌
寝咄の足でおりおり鳴子哉
知た名のらく書見えて秋の暮
菊月や外山は雪の上日和
蛬鳴やつづいて赤子なく
朝皃や湯けぶりのはふぬれ肱
朝皃やひとの皃にはそつがある