白蚊帳に覚めて侘び居つ朝曇
日盛の土にさびしやおのが影
たのもしく松風立つや日の盛
日盛や駛る電車を搏つ樹影
日盛の壁を眺めて無聊なる
松の葉のしんかんとして日の盛
鶏鳴くや漁家日盛の古簾
起きぬけの肌の曇や夏の露
露涼し湯女と来て湯女裾からげ
ひとめぐりする草山や露涼し
露涼し裏戸竹割る音のして
吾妹子や虹を見る眉あきらかに
夏の月樹下に石上に人語かな
大凪ぎに凪いで夏湖あさみどり
大湾の呑吐の船や土用浪
そよ風やしきりに湧ける夕泉
玉鏡遺れたまへる泉かな
大滝も小滝も暮れて響かな
滝の音こもりて夜の茂かな
かがまりて水皺親しき清水かな
仁丹を清水の中へこぼしけり
夜雨こぼれそめぬ植田の水明り
水汲めば青田暮れゆき覚束な