和歌と俳句

日野草城

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白蚊帳に覚めて侘び居つ朝曇

日盛の土にさびしやおのが影

たのもしく松風立つや日の盛

日盛や駛る電車を搏つ樹影

日盛の壁を眺めて無聊なる

松の葉のしんかんとして日の盛

鶏鳴くや漁家日盛の古簾

起きぬけの肌の曇や夏の露

露涼し湯女と来て湯女裾からげ

ひとめぐりする草山や露涼し

露涼し裏戸竹割る音のして

吾妹子やを見る眉あきらかに

夏の月樹下に石上に人語かな

大凪ぎに凪いで夏湖あさみどり

大湾の呑吐の船や土用浪

そよ風やしきりに湧ける夕泉

玉鏡遺れたまへるかな

も小滝も暮れて響かな

の音こもりて夜の茂かな

かがまりて水皺親しき清水かな

仁丹を清水の中へこぼしけり

夜雨こぼれそめぬ植田の水明り

水汲めば青田暮れゆき覚束な