道々の餘花をながめてみちのくへ
餘花に逢ふ再び逢ひし人のごと
みちのくの旅に覚えし薄暑かな
供華のため畦に芍薬つくるとか
遠目にはあはれとも見つ栗の花
君知るや薬草園に紫蘭あり
梅雨といふ暗き頁の暦かな
代馬は大きく津軽富士小さし
相語り池の浮葉もうなづきぬ
かはほりや窓の女をかすめ飛ぶ
岩の上の大夏木の根八方に
葡萄榾ちよろちよろ燃えて夏炉かな
夏山の彼方の温泉に子規は浴みし
夏山のトンネル出れば立石寺
夏山やトロに命を託しつつ
銀杏の根床几斜に茶屋涼し
島々に名札立ちたる涼しさよ
バスが著き遊船が出る波止場かな
夏山に家たたまりて有馬かな
崖ぞひの暗き小部屋が涼しくて
雪渓の下にたぎれる黒部川
梅雨晴間打水しある門を入る
打水をよろめきよけて病犬
夏の月かかりて色もねずが関
夏風邪はなかなか老に重かりき
浜茄子の丘を後にし旅つづく