和歌と俳句

黎明の雷鳴りしづむ五百重山 蛇笏

激雷のとどろき地殻波うてる 悌二郎

戸の隙に雷火燃へつつ子ら寝たり 悌二郎

雷鳴の子らの眠りにさはりなし 悌二郎

雷去りぬ雷のにほひの戸をひらく 悌二郎

雷険し消ぬべき灯うち仰ぎ 

雷近く林相翳を深うしぬ 亞浪

大雷雨ばりばり芭蕉八つ裂きに 茅舎

雷撃つて電柱白磁飛ばしけり 茅舎

遠雷や睡ればいまだいとけなく 汀女

うつくしくかみなりひびく草葉かな 耕衣

昇降機しづかに雷の夜を昇る 三鬼

屋上の高き女体に雷光る 三鬼

みどり翳す灯の下に読めば遠き雷 楸邨

真夜の雷吾子と坐りゐて聴きにける 楸邨

かまつかの色の萠しの雷震ふ 茅舎

髪刈りし父とその子に雷ひびく 鷹女

はたた神過ぎし匂ひの朴に満ち 茅舎

雷雲に巻かれ来りし小鳥かな 虚子

洞然と雷聞きて未だ生きて 茅舎

遠雷や枝蛙より色はなれ 楸邨

遠雷のいとかすかなるたしかさよ 綾子

遠雷や二条胡同に犬と立つ 楸邨

遠雷やみなものおもふ仏の目 楸邨

雷落ちて火柱みせよ胸の上 波郷