和歌と俳句

臼田亞浪

浅間猛る日々を黄ばめり山の

河鹿啼く水打つて風消えにけり

うぶすなの昔の榎茂れども

よしきりの現れて啼く草嵐

網に入るあをさばかりや梅雨曇り

白凪に鼻の日焼の見られけり

杉の鵜が竹の鵜を呼ぶ日暮かな

植ゑ上げて夕べ田原のしんとしぬ

青し国原梅雨雲のひらかむとして

よし雀お祭船へ啼きかはし

島影の常世に眠り照りかすむ

燈籠のわかれては寄る消えつつも

草蝉のあはれは硫気草あふつ

沖は白浪島蝉声を絶ちにけり

豌豆摘み下田通ひの船に佇つ

山蛙常磐木落葉時しらず

はじいてもまた来る蟻に汗しけり

近く林相翳を深うしぬ

山宿の壁に紛らふなりけり

山雷や毛野の青野に人も見えず

天ゆ落つ華厳日輪かざしけり

睡蓮の花沈み今日のこと終へず

帰還兵病めり熟れゐる山の

飼屋妻郭公啼いてねむげなる

ほととぎす山の節会の燈も稀に