和歌と俳句

三橋鷹女

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こころ燃ゆ夕映えもえゆる束の間は

眼底にのこれる人も夕映えぬ

炎天の蝶をかなしき眸にとらへ

英霊となり炎天をかへり来給へり

炎天に眼をさらし哭かじとす

あやめ咲くことを思へり厨房に

子と母の夕餉あやめを眸にゑがき

鶴は病めり街路樹の葉の灼けて垂り

炎天に愛しみあへり鶴と女

咲きのぼり断水区域なり

児が啼けり断水街の街中に

花火店日並び夜毎給水車

地表灼けひるがほ小さき花つけたり

ほそく昼餉の卓に反りかへり

黒猫もいたく夏痩せ吾が家に

髪刈りし父とその子にひびく

蚊帳青し眠らえぬ夜の瞳をつむり

電工はかなしからずや天灼くに

母を恋ふ一瞬工夫宙に灼

なめくぢも我れも夏痩せひとつ家に

なめくぢを罵るこころ主婦となり

ひまはりの昏れて玩具の駅がある

夏旅の短かに吾子の頬尖り

子の鼻梁焦げて夏山をいまも言ふ

あはれ我が心に展け夏山河