いもといふ言葉をかしも水を打つ
梧桐の落花を踏んで夏痩せぬ
夏痩せて火星に棲めるかほかたち
かはほりは火星を逐はれ来しけもの
夏深く我れは火星を恋ふをんな
吾れに白紙蛾に白壁のしろき夜が
蛾の翅音聴きつつ今宵眠られぬ
夏来たる白き乳房は神のもの
著莪咲いて乳房うつうつ睡たかり
ひるがほに愚となりゆく頭脳
ひるがほに昼まぼろしのいや濃かり
昼顔に人は髑髏となりて果つ
若葉濃し静脈波をうつてゐる
牡丹散る唇あつき朝に居る
けし散りぬ掟は人の世に重く
青簾あをしまぼろし来て住める
鵜は巖かやつり草は野にあふれ
悔あれば真実梅の実があおい
著莪咲くと人妻はする青い衿
羽蟻飛び立ちぬ平和な朝がいま
光りつつ羽蟻は穹にちらばれり
芥子散ればおもき頭蓋がわれにある
芥子散つて細菌髪の毛をねらふ
風鈴の音が眼帯にひびくのよ
風鈴に眠らうとして眼がひとつ