万燈がゆく花笠がゆく遠太鼓
手花火のしだれ柳となりて消ぬ
踊りぬけて背にひえびえと松の幹
たそがれて人ごゑを聞く案山子かな
一つとなりし虫を放ちにゆきにけり
かたげこぼす壺の水より秋のこゑ
しら珠の露に濡れたる切籠かな
月明の松に懸かれる切籠かな
百聯の提灯ゆくよ魂送り
流れゆく瓜のお馬や水に月
梧桐の実のふねは散る初秋かな
梧桐の実の風ふねに実のふたつ
梧桐は実の房なるに小糠雨
秋霊の訪ひしより簾かな
母に似て細き面輪や秋袷
吾もまた淋しき性よ秋袷
花葛の淡き模様の秋袷
ぢみな色をわれは好めり秋袷
秋冷や粥にそへたるちりれんげ
うたたねの唇にある鬼灯かな
秋耕のまなじりさびし渡り鳥
秋耕や四方の山々夕茜
海神のくらき笑ひや葉月潮
徳利の木犀香る夜業かな
みちのべの赤まんまなど月の家