白き萩消えて繃帯の山がある
萩咲けばこれの窓際に椅子を置き
あたたかい雨ですえんま蟋蟀です
コスモスの散りしきるとき醜のわれ
窓押せば霧流れ入る霧はかなし
四五本のけいとう燃えてゐる疲れ
秋痩せぬ赤のまんまの野にとほく
萩こぼる筆をとらで来し一年
にごりなき心に菊を咲かしめぬ
菊白くわが手の時計秒を刻む
秋燕のそらのはろかに瞳をほそめ
山ぶだう野面に酸ゆし秋燕
ひたすらに飯炊く燕帰る日も
美しきもののさみしさよ秋来たり
秋痩せぬ銀漢ひののへに明るく
秋痩せぬ椎大木は昔のまま
母に秋日はらから吾等寄り集ひ
山の萩一斉に赤し雷わたる
曼珠沙華濡るれば濡るる野の烏
秋雨に濡るるおのれと野烏か
烏烏秋の霖雨は野に荒し
真剣な貌が鉄打ち緋のカンナ
鉄を打つ一瞬カンナ黄に眩み