前垂に刀豆摘むや秋の雲
むくろじと知らで拾ひし木の実かな
さみしさの種無柿を食うべけり
さしそへて淋しき花の吾亦紅
秋来ぬとこころにおきし起居かな
みちのべの狗尾草も野分かな
たそがれて顔の真白き案山子かな
日に焼けて秋の野山を歩きけり
豆柿や真青き蔕をおのがじし
こぼれ穂にわが足触れてもたいなや
カンナ緋に黄に愛憎の文字をちらす
幻影は砕けよ雨の大カンナ
初嵐して人の機嫌はとれませぬ
萩の露ふかくてことば交されず
白日のカンナの彩に瞳つぶれぬ
緋に憑かれ黄には疲れて夕カンナ
熟れざくろ濃き朝霧を噛んでゐし
寄り添うてわれは釣らずよ鯊日和
おもひ濃くなりゆくばかり萩を去る
草市の草葉つめたく手に触りぬ
草の市をとこをみなの出て買ふも
莟より花の桔梗はさびしけれ
凡骨は野菊を踏んでゆきにけり